クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
……大切にされてる……
それは、私も痛いほど、分かってる--
その日の午前、資料管理室へ向かいながら、私はさっきの笹倉さんの言葉を思い返していた。
もし、小野原さんが私から離れていってしまったら、今度こそ立ち直れないような気がする。
彰斗の時みたいに、突然別れがやってきたらどうしよう--とか、ふとした時に考えてしまう、そんな臆病な私も嫌なんだけど。
私は資料管理室のドアを開けた。
奥に誰かいる。
「お疲れ様です」と、その横を通り過ぎようとして、その人物と目が合い--
ギクッとした。
彰斗だったからだ。
顔を見た瞬間、結婚式で聞いた話を思い出し、気分が重くなる。
私は無言でさっさと自分の用件のある棚に近付いた。
すると、靴音が私の方へ近付いてきて、すぐ後ろで止まった。
「……土曜日は、ごめん」
「……」
「あんな話、聞かせるつもりはなかったんだ」
……ああ、もう、やめてよ。思い出して余計に気分が悪くなるだけだから。
「もっと早く香奈と話したかったんだけど、避けられるのが怖くて、声掛けられなかった」
……そういえば、先週の月曜日、廊下で彰斗にそんなこと言われたような気がする。
でも、そんなことは今さらどうでもいい。
「今、勤務中なんで私語はやめてもらえませんか?それに、彼女以外の女を名前で呼ぶのは、まずいと思いますけど」
私は冷ややかな態度で言った。
「……黒本とは別れた」
「……は?」