クール上司の甘すぎ捕獲宣言!

その日の午後七時。

私は会社の最寄り駅ではなく、別の駅近くのカフェの前に立って、中の様子をうかがっていた。


昼休み、連絡があったのは小野原さんからではなく--彰斗からのラインだった。

『昨日はごめん。会ってちゃんと謝りたい。
○○駅前のカフェで六時半に待ってる。来てくれないかもしれないけど、待ってる。もう何もしないから』




何を今さら……。

はっきり言って、無視しようと思った。

でも……私も思いっきり彰斗をひっぱたいてしまった。

いくら相手が暴言を吐いたからといっても、後になってから考えたら、自分の行動は大人としてどうかと思う。

……誰かを平手打ちしたのは、人生で初めてだ。

それだけは私も謝ろう。それだけ、は。




いつも通り残業をし、指定されたこの場所に着いたのは七時前。

約束の時間から三十分経った。もう彰斗は帰ったかもしれない。

いや、その方がむしろ良い。

そう思って、中をのぞくと……。

金曜の夜、少し混雑した店内に、彰斗はいた。椅子に座ったままじっとしている。

……私が来るまで待つつもりなのか。

別に私が行く必要はない。いつまでも来ない私を待ってたらいいじゃない。

と思ったけど、万が一、この後もズルズルと連絡が来るのも嫌だ。

それに、どうしようか迷ったけど、結局ここまで来ちゃったしな……。

……よし、私も言いたいこと言って帰ろう。

私たちの関係に今度こそ、終止符を打つ。



私は店内に足を踏み入れた。



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