クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
ここで、合ってるよね?

私はそっと近付き、

「資料お持ちしました」

と言うと、小野原課長は、

「ご苦労様」

と、パソコン画面に視線を落としたまま、答えた。

……近寄り難いな、この人。女子社員はキャーキャー言ってるらしいけど。

私は、静かに資料を置くと、部屋を出ていこうと体の向きを変えた。

その時。

「待ってください」

その声に、振り返ると、こちらに近付いてくる
課長の姿があった。

「これを」

と言って、差し出されたのは、この前私の手元を去ったハンカチと同じデザインの物。

「お返しします」

「……え?」

……どういうこと?

「それから、勘違いしていると思うので、誤解の無いように言っておくけど、永沢さんが先日見た女性は私の恋人ではありません」

淡々とした口調で、課長は言葉を続ける。

特に名乗ったこともないのに、名前を呼ばれ、少し驚いた。

それに……先日?……女性……って言われても、誰のこと?

「突然、怒って泣き出した時は、さすがに戸惑ったけど、それを見ていた君が、そう勘違いするのも無理の無いことだと思います」

……先日……女性……泣き出した……そして、このハンカチ。



あ。

私の中で、一本につながった。


「も、もしかして、あの時の……!?」

ビックリする私に、今度は課長が逆に、やや驚いたように目を大きくする。

「まさか、今、気付いたとか?」

私が、コクコクとうなずくと、課長は呆れたように息を吐き出した。

「普通、ハンカチを返された時点で、気付かないか?」

「すみません……」

この鈍感、と言われているようで、私は思わず背を丸めた。

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