クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
いつもとは違う疲れを全身に感じて、私は目を覚ました。
カーテン越しに、陽の光が室内を薄く照らし出している。
目の前には、静かな寝息をたてて眠る小野原さんの顔が。
とたんに昨夜のことを思い出し、恥ずかしさが込み上げてくる。
触られてない部分なんて無いんじゃないかってくらい……身も心も全部、溶かされてしまいそうだった……。
小野原さんを起こさないようにと、静かにベッドから抜け出そうとした時、そっと手を握られた。
「……おはよう、香奈」
少しかすれた声が、やけにセクシーだ。
「……おはようございます……」
朝の光に浮かび上がる小野原さんの引き締まった上半身や、広い肩幅が視界に飛び込んできて、目のやり場に困る……。
昨夜は部屋の照明も薄暗かったし、恥ずかしいのと余裕がないのとで、ほとんど目を閉じてたから……ちゃんと見るのは初めてかも……。
額にかかる前髪をかき上がる仕草とか、朝から男の色気がハンパなくて、ドキドキさせられっぱなしの私は思わず宙に目を泳がせた。
「休みだから、もう少し寝てればいいのに」
「……いえ、シャワーを借りようかと思って……ごめんなさい、小野原さんを起こしてしまって……」
「……」
やや沈黙の後、私は再びベッドに引き戻された。
「……きゃっ」
そのまま小野原さんに組み敷かれる。
「何で、恋人なのに名字で呼ぶんだ?」
恋人……ああ、そうか……。
なんだか改めてそう言われると、くすぐったい気持ちになる……。
「……えっと……けい……け、け」
ダメだ……!恥ずかしくて、呼べないっ!
そんなにじっと見られたら、余計に呼べないよ!
……あ、そうだ、顔見なきゃ、呼べるかも……!
私は小野原さんの首にぎゅぅとしがみついた。
耳に口を寄せる。
「……圭一さん……」
よし、言えた!
と、満足してたら、小野原さん……じゃなかった、圭一さんの様子が、何かおかしい。
「……圭一さん?」
もう一度呼ぶと、そのまま覆い被さられた。
「煽ってるのか?」
「……え……な、何が……」
「耳元でそんなに可愛くささやかれたら、止まらなくなるだろ」
「えっ、私、そんなつもりじゃ……」
慌てる私を、圭一さんが優しく、でもどこかいたずらっ子のような眼差しで見ている。
そして、やっぱり、甘いキスが唇に落ちてきた。
例えようのない幸福感に包まれる。
誰が何と言おうと、きっと、私は世界で一番幸せな朝を迎えている……。