クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「着地成功!香奈っちに抱っこしてもらうと何でか美羽の眠りが深くて、助かっちゃう。ありがとうね」
美羽ちゃんをベッドに寝かし付けて、朱音さんがリビングに戻ってきた。
私とすっかり打ち解けた朱音さんは、私のことを「香奈っち」と呼ぶ。そこは、「香奈さん」とかじゃないの?って思ったけど、なんか朱音さんらしいなと思って諦めた。
それに、もし美羽ちゃんがしゃべり始める頃、たどたどしく「かなっち」って呼んでくれる姿を勝手に想像したら、頬が緩んできたから……
うん、許す!
「今日、香奈っちのご実家に行くんでしょ?時間大丈夫?」
「あ、うん、もうすぐ行くから」
圭一さんと二人で玄関へ向かう。
「また来てね。あ、美羽の服、ありがとう。でも、これまでもだいぶもらってるし、次は手ぶらで来てね。そのお金、二人の分に使ってよ」
朱音さんの言葉に、圭一さんと顔を見合わせる。
「うん。分かってるんだけど、美羽ちゃんが可愛くて、つい……。今度は普通に来るね。お邪魔しました。またね」
手を振り、朱音さんのマンションを後にした。
「朱音さん、すっかりお母さんらしくなりましたね」
車中で、運転席の圭一さんに声を掛けた。
「そうだな、正直、あの朱音が信じられないけどな」
「はい。だけど、家族仲良しみたいで、良かったです」
あの朱音さんが、毎日、育児と家事をこなし、いまや立派なお母さんになっている。大変で疲れてると思うけど、その美しさは少しも損なわれていない。……恐るべし、小野原家の血……。