クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
でも、女性がちゃんと帰れたようで良かった。二人に何があったかは知らないけど、気になることは聞けたし、後は私には関係の無いことだ。

では、これで、と部屋を出ようとした時、ふと思った。

なぜ課長は、わざわざ誤解を解こうとしたのか。ハンカチを返すだけなら、こんな話しなくても良かったはずだ。

あ、そうか、と私は心の中でポンッと手を打った。

「あの、私、あの日のこと、誰にも言うつもりありませんから」

社内でのイメージは大切だ。私が、課長がフラれてたとか、女性を泣かせてたとか、勝手な解釈で周囲に言いふらしたりしたら、いろいろとマズイもんね……。

すると、課長は1歩前に出て、私との距離を縮めた。

「別に、他の誰にどう思われようが、構わない。ただ、君にだけはそう思われたくなかったから」

……え?

首をかしげていると、課長の視線とぶつかった。

眼鏡の奥の瞳が、真っ直ぐ見つめてくる。

何だか、胸の奥がざわついて落ち着かなくて、視線をそらした時、課長の携帯電話が会議室中に響き渡った。

「はい、小野原です」

課長は電話に出ると、すぐにパソコンの所に戻り、パソコン画面を見ている。

とにかく、助かった……。『何に』からなのかは、分からないけど。

私は音のない影のように、サッと会議室から抜け出た。

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