クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
気になる理由
月曜日。
「永沢さん、金曜はごめんね! 残りの仕事、押し付けちゃって」
出勤した私を見て、笹倉さんが駆けてきた。
「いいえ。それより、お子さんの具合、いかがですか?」
私は終わった分の書類を手渡しながら尋ねた。
「うん、あれからすぐ病院に連れていったんだけど、ただの風邪だったみたい。土日でゆっくり休ませたら、もうすっかり元気になったわ」
「お子さん、良かったですね」
「本当にありがとうね。大変だったでしょう?」
「いえ、大丈夫です。助けてくれた人がいたので……」
その後、まさかの告白が待ってたけど。
結局、あの後、どうなったかというと――
課長は、なかなか引いてくれそうにないので、「付き合う前の段階からで」ということで許して(?)もらった。
第一、私は課長のことを良く知らない。
それは、課長も同じだと思う。前から見ていた、って言ってたけど、私の何を知っているというんだろう。
勝手なイメージで近付いてこられて、こっちも本気になった後、「やっぱり思ってたのと違ってたから」と、勝手に去られるのは、さすがにダメージが大きい。傷の治りも、昔より断然、遅い。
守りに入っているのは自分でも分かっている。
彰斗と会社で再会してから、約半年。そんなに頻繁な回数ではないけど、廊下ですれ違うこともある。なるべく顔も見ないようにしてるけど、そうすること自体、やっぱりまだ吹っ切れてない証拠なんだと思う。
中途半端に新しい恋をして、余計な傷を増やしたくなかった。