クール上司の甘すぎ捕獲宣言!


待ちに待った金曜日がやってきた。明日、明後日は仕事は休みだ。

明日は高校時代からの親友が泊まりにくる予定になっている。パーっと騒いで、モヤモヤしたもの、忘れよう。



「ごめん、永沢さん、この間の資料、取ってきてくれない? 私、今手が離せなくて」

「いいですよ、分かりました」

笹倉さんの依頼を受け、私は資料管理室へ向かい、扉を開けた。

その瞬間、体の動きが止まった。

――中に、小野原課長がいたからだ。

え、今日の夜、帰ってくるんじゃなかったの……?

そう思っていると、入口で立ちっぱなしの私に、課長が言った。

「そこ、閉めてもらえませんか?」

淡々とした口調に、少し寂しさを感じるのはなぜだろう……。

「すみません……」

私は、そっと扉を閉めると、資料を探しに奥へ入った。

課長の方をチラッと見ると、何やら沢山の資料を、備え付けの机の上に広げている。

当然、こちらには目もくれない。

やっぱり、あの日のことは、何も無かったんだ。

これで元通り。これでいい……。


私は、目的の資料を見付けて、部屋を出ようとした。すると、後ろから手が伸びてきて、私よりも先に、扉の取っ手を押さえた。

……課長の手だ。

「あ……すみません」

先に出るのかな、と思って一歩下がると、背中が課長の体に、トンッと軽く当たった。

課長はそのまま、もう片方の手を壁についた。

……自然と、私の体がその間にすっぽりと収まる状態になる。

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