クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
簡単に言うと、私は扉の方を向いたまま、壁ドンされているような格好。

「あの……」

「久しぶりに帰ってきて、朝から君の顔を見られて嬉しいのに、もう戻るのか?」


え……? 嬉しい、って言った……?



「……課長、夜に帰ってくるんじゃなかったんですか……?」

声がかすれそうになる。

「予定が早まった」

「……お疲れ様です……」

課長はそのままじっとして動かない。


「香奈」


耳元で低くささやかれ、体がビクッと反応する。


「……あの、私達、まだ付き合う前の段階じゃ……?」

「うん……だから今は自分を抑えてる」

……お、おおお抑えてるって!?

確かに、まだ体には触れられてないけど。

それでも、近いっ、近い近い近いーっ!

この慣れない状況に、私の頭はパニック寸前だ。

「香奈、今日何時に仕事終わる?」

「た、たぶん、六時くらい……」

「じゃあ、終わったら、駅の北側で待ってて」

そう言うと、課長は私から離れた。

「先に出て。俺は後から出るから」

振り返ると、課長は資料を広げた机に戻っている。

……ああ、そうか。二人同時に出ると、周りから怪しい目で見られるから。

私はそっと、資料室を後にした。

……さっき、予定聞かれて、余裕がなくて正直に答えちゃったけど、もしかして、デートの誘い……?



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