クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
車内には優しい洋楽が流れていて、気分も落ち着く。
会話が途切れることもあったけど、なぜかいつものように、それが苦にならなかった。
しばらく走ると、課長はとあるビルの駐車場へと入った。
車を降りて、エレベーターに乗り、ついて行くと、そこは最上階にあるレストランだった。
「わあ、すごい……」
窓側の席に案内されるのと同時に、私は子供のように歓声を上げた。
一面、ガラス張りの向こうに、街の夜景が広がっている。まるで、色とりどりの沢山の宝石を散りばめたよう。道路を流れる車のライトさえ、光る小さなパールみたい。
そういえば、今年に入っていろいろなことがあったな……。景色とか、ゆっくり見る余裕も時間も無かった。春からは、新しい環境で覚えることもいっぱいで、がむしゃらに突っ走ってた気がする。
メニュー内容は、課長とお店の人にお任せした。
課長は車なのでお酒を飲めない。私もそんなに強くない方なので、遠慮することにした。
課長と食事をするのは初めてだ。先週は、あの後、雨が小降りになってきたので、帰ることにした。駅で少し待ったけど、電車も無事に復旧した。
だから、あの洋食屋ではコーヒーしか飲んでいない。……突然あんな話の後で、ゆっくり食事する気分でもなかったし。
少し夜景を眺めてから正面を向くと、課長がじっとこちらを見ているのに気付いた。お店の間接照明が課長の横顔を照らし、大人の男性の妖艶さを感じてドキドキする。
でも、もしこの人と付き合ったら……。
周囲も認めるハイスペックな人と付き合えたら
……
彰斗を見返せる……?
……いやいや、無理だ。そんな目的だけで付き合えるほど、私は恋愛術に長けてない。
私は首を振って、邪念を追い払った。
「あの、課長……」
「二人の時に “課長” はやめてほしいな」
……ああ、そうか。
「ええと、じゃあ……小野原……さん」
「……」
あれ?なぜか小野原さんは不服そうだ。