クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「でも、いつも頑張ってるその子は、営業部に来る時だけ、元気がなかった」

小野原さんは、私に視線を戻して言った。

「なぜかいつも下ばかり見て、顔を上げようとしてなかった。他の部署や廊下や休憩室で見掛けた時は、普通に人と笑ったり話したりしてるのに、営業部の時だけ、別人のようになる」

「……」

……はい。それは、元カレがそこにいるかもしれなくて、顔を見るのがツラいからです。

とは、情けなくて言えない。

ていうか、そんなとこ見られてたなんて……。

「営業部に何か原因があるのかと心配になった。それが元で優秀な人材に辞められるのは、他部署であっても、上に立つ者として惜しいからな」

「……」

「それから、何かと気になるようになって。気付いたら無意識のうちに目で追うようになった」

……直属の部下でもないのに、私、知らないうちに小野原さんに心配かけてたんだ……。

「だけど、いつか正面から君の顔を見たいと思うようになった。それは思わぬ形で実ったけど。まさか、押し倒されるとは思ってなかった」

神社でのアクシデントのことを言ってる!

「あ、あれはそうじゃなくて、転んだだけですから!」

全力で否定すると、小野原さんは、「分かってるよ」と、笑った。


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