クール上司の甘すぎ捕獲宣言!




帰りは結局、送ってもらうことになった。電車で帰ります、と言ったけど、遅くなったのは自分の責任だから、と引かないので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。それに、ここが何処か分からない。

連絡先も交換した。今日一緒にいて、小野原さんの気持ちも分かったし、今のところ、連絡先を教えない理由がないと判断したからだ。



「ずっと気になってたことがあるんだけど」

ハンドルを握りながら、小野原さんが言う。


……それって、営業部での私の態度のことじゃ……? どうやって答えよう……。


「香奈は何であの日、あの神社に?」

……そっちか。

予想が外れて、ホッとした。

「実はあそこ、私の実家なんです」

「……え?」

これには小野原さんも少し驚いたみたい。神社って、周りにはどんなイメージなんだろう。

「しきたりとか厳しいの?とか聞いてくる友人もいましたけど、うちはそんなに格式高い神社じゃなくて……。だから、あからさまではないけど、小さい頃からクリスマスのプレゼントも、もらってましたし、ケーキも食べてました」

「……そうか。……じゃあ、今年のクリスマスは一緒に過ごせるといいな」

「わ、私、そんな意味で言ったんじゃ……!」

また小野原さんのペースに巻き込まれる、と思って否定すると、「分かってる」と、また笑われた。

そんな笑顔が可愛い、と思ってしまう私……。


小野原さんは最後まで、営業部でのことは聞いてこなかった。私より大人だし、観察力にも優れてるだろうから、薄々気付いてるかもしれない。それを無理に聞き出そうとしないところに、表面からは見えない、小野原さんの優しさを感じた。



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