クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
やがて、車のナビが私のマンションの近くに到着したことを告げ、車が停車する。
「今日はいろいろとありがとうございました」
お礼を言って降りようとすると、
「香奈」と呼び止められた。
「はい?」と何気なく振り向いた瞬間ーー
小野原さんが、助手席側に身を乗り出してきた。
唇に柔らかいものが触れる。
目の前には小野原さんの端正な顔。神社で初めて顔を見た時より、もっと近いーー
「!」
キスされたと分かるまで、時間はかからなかった。
すぐに離れた唇から、小野原さんの声が聞こえる。
「ごめん、我慢出来なかった。名残惜しくて」
……ゆ、油断してた!
「……怒った?」
「……怒って……ません……」
そうよ、たかがキスぐらいで、動揺しないんだから……。
って、大人の女ぶってみたけど、そんな熱っぽい目で見られたら、理性が飛びそう……!
「お、おやすみなさい!」
私はまるで鉄砲玉のように車から飛び出した。
「おやすみ。マンションに無事に入るまで見とくよ」
小野原さんは優しく微笑む。私はまだドキドキする胸をおさえながら、エントランスに入り、振り返ってお辞儀をすると、車はようやく発進した。
今日は疲れた……。
でも、その疲れがなぜか、妙に心地よかった。