クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
時計を見ると、二時を少し回ったところ。

志帆は夕方に、ここに来ることになっている。

まだ時間があるし、外は良い天気だ。自転車で、志帆がお気に入りのケーキ屋さんでお菓子でも買いに行こうかな。

私は迷わず、玄関を出た。






街路樹が頭上を流れていく。

風が頬をなで、髪の中をすり抜ける。

自転車って、気持ちいい~!

春頃、折り畳み自転車を買った。最寄り駅から自宅マンションまでは、徒歩十分ぐらいだから、通勤では使わないんだけど、休日に時々、気ままに行きたい方向へ自転車を走らせるのが楽しみになった。

この折り畳み自転車はとても便利。女性の力でも簡単に畳めるし、持ち運びも出来て、スペースを取らない。

駅より反対方向へ進み、しばらく走ると、高層マンションの立ち並ぶエリアに来た。この近くに、志帆お気に入りのケーキ屋がある。

私は、近道をするために、大きな公園の中に入った。

その公園は、子供が遊ぶスペースの他に、広い芝生があったり、並木がきれいな散歩コースがあったり、市民の憩いの場として愛されている。

私は気分良く、ペダルを漕いでいた。

すると、道の先のベンチに誰かいる。

ん……?

見覚えがあるようで、私は目を凝らした。

黒い髪に、眼鏡の男性だ。長い足を組んで座っている。

「あ!」

…………小野原さんだ。スーツも着てないしネクタイもしてなくて、普段の服装だけど、間違いない。……何でこんな所に……?

小野原さんは別の方を向いているので、私に気付いていない。……イケメンは座ってるだけでも絵になるなんて、もう性別関係なしに、ただただ羨ましい。

ここで何してるか分からないけど……。

私はゆっくり近付いて、声を掛けようとした、その時。

「ごめーん、お待たせ!」

小野原さんの視線の先から、一人の女性が現れた。立ち上がった小野原さんの腕に、その女性は自分の腕を絡めた。

< 44 / 167 >

この作品をシェア

pagetop