クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「誰もそんなこと言ってないでしょ。とりあえず、避けたりせず、普通にしてみたら?」

「……普通?」

「そう。例えば話し掛けてみるとか」

「えっ?」

……いきなりハードル高過ぎなのでは……?

「意外にすんなり話せるかもよ?そしたら、悩んでた自分が馬鹿みたいに見えるでしょ」

「でも、それで無視されたら……」

「もう!何、別れた相手から今さら良く思われようとしてるのよ。それに、あれから何ヵ月も経ってるのに、それを無視するようなら、そいつはそれだけの男よ。小さいヤツ。早く別れて正解だったと思えるし、踏ん切りもつくじゃない」

「そう……かな」

「そうよ。これまで忘れようとして避け続けて、でも結果はただ古傷が化膿したまま残ってる状態でしょ。だったら、やり方を変えるのもいいと思うよ。このままの自分を変えたかったら、自分から動かなきゃ」

「……」

「じゃないと、小野原さんとのことも前に進まないと思う」

そう……だよね。

「それで、小野原さんのことはどう思ってるの?」

さっき、志帆には、ざっくりと彼との出会いと、いきさつを説明しておいた。

「うん……仕事は出来るし、カッコいいし、私にはもったいないくらい」

「外見じゃなくて、中身は?」

「……まだ個人的に会ったのは少ないけど……思ってたより笑うし、沈黙もそんなに苦じゃないし……」

……不意討ちで、ドキドキさせられることはあるけどね……。

「……そっか。何か、いい感じね」と志帆。

「そう……?」

「うん。小野原さんへの気持ちは急ぐことなく、ちゃんと向き合っていったらいいと思うよ。香奈の性格上、無理に急いで誰かと付き合おうとすると、きっとダメになっちゃうから」

志帆はそう言って、シチューを口に運んだ。


「昔の恋を忘れるには新しい恋が一番よ!行っちゃえ、行っちゃえ!」とか、志帆は絶対に言わなかった。

それは、私のことを良く理解してるからだと思う。そんな志帆の気持ちが嬉しかった。





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