クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
心の天気は晴れのち曇り




「そういえば、永沢さん、何か良いことあった?」

月曜日の、昼休みも終わりかけの頃、笹倉さんが声を掛けてきた。

「え?」

「うん、朝から感じてたんだけど、いつもより雰囲気が柔らかい感じ」

「えっ、私いつもそんなにピリピリしてました?だったら、すみませんっ」

「違うわよ」

アハハ、と笹倉さんは笑う。

「いつもは仕事のオーラが出てるけど、今日は何ていうんだろ……周りに色が付いてる感じ」

「……い、色ですか?」

その時、「永沢さーん、三番にお電話でーす」と対岸のデスクから、声が飛んできた。

急いで自分の電話のボタンを押して「はい、お電話代わりました」と電話口に出る。顔だけ笹倉さんの方に向けて、少し頭を下げ、目で「すみません」と合図を送った。笹倉さんは、うん、またね、と手を振りながら、自分の席に着いた。

顧客からの電話を終えて、パソコン画面を見ながら、笹倉さんの言葉を思い出した。

……私、今日は何か違うのかな?自分では気付かなかったけど……。

それって、小野原さんとの約束が楽しみだから……?




『今度の土曜日、出掛けよう』

小野原さんから電話があったのは、昨日の日曜の夜。志帆が帰った後だった。

携帯で話すのは初めてだったけど、小野原さんの落ち着いた声が耳に届いた時に、最初に耳元で名前を呼ばれたことを思い出して、ついドキッとしてしまった。

『どこに行きたい?』

『そうですね……映画は?』

ベタだったかな、と思ったけど、フツーの私にはこれくらいしか思い付かない。

『いいよ。俺も最近映画館に行ってないから。何か観たい?』

小野原さんが私の提案に賛同してくれたことに気を良くした私は、最近公開されたSFアクション映画のタイトルを言った。

その映画は何年も前から続くシリーズ物で、見事にそれにハマってしまった私は、それまでのDVDを全巻揃えるまでの大ファンになってしまい、最新作を心待ちにしていた。

『……』

すると、小野原さんが黙ったままでいる。

……しまった…… デートなんだから、ここは恋愛モノとか、感動系が正解だった……?

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