クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
時計が定時の時刻を指す。
「お疲れ様でした~」の声と共に、徐々にフロアに残っている人の数がまばらになっていく。
私は、少し明日の準備をするために、残業することにした。
気分転換するために飲み物を買いに、休憩室へと行く。
そこには自販機が3台置かれていて、社員が自由に買えるようになっている。
そのうちの1台の前。
「あ……」
これから買おうとしているのか、彰斗が立っていた。
こちらに背を向けているので、彰斗は私に気付いていない。
いつもなら、ここで引き返すところだけど――
『話し掛けてみたら?』
志帆のアドバイスが頭の中から聞こえる。
……よし、前に進むため。自分を変えるため。
私は勇気を出して、近付いた。
そして、彰斗が自販機から、ペットボトルを取り出したタイミングを見計らって……声を掛けた。
「あき……江田くん」
私は、あえて学生時代の呼び方で呼んだ。
「……え?」
彰斗は驚いて振り返る。そりゃそうよね、話し掛けるのは数ヶ月ぶりだもん……。
「……久しぶり、ね……」
「……ああ」
「……江田くんは、井村(いむら)くんと優花(ゆうか)ちゃんの結婚式に行くの……?」
井村くんと優花ちゃん、とは、今月末に結婚する新郎新婦のことだ。私達の共通の話題は今、それしかない。
「あ、うん……。永沢さんは?」
彰斗も、昔の呼び名で返してきた。それが、私達の今の距離だ。
「……行くよ。あの二人、絶対幸せになってほしいね」
「そうだな。俺、井村の幸せそうな顔見たら、泣くかもな」
彰斗は、フッと笑った。
彼の、親友を思う気持ちは、昔のままだ。
……あ、何だか普通に話せてる……。
「今から残業か?」
彰斗が尋ねてきた。
「うん、見積の件で、明日朝イチで顧客から電話かかってくるから」
「そうか、大変だな。俺も今から少し仕事するよ。……じゃあ」
彰斗は片手を挙げると、そのまま休憩室を出た。
……良かった。……ちゃんとしゃべれた……かな。
何より驚いたのは、思ったより気持ちが少し晴れやかなことだ。
私を縛っていたのは、私自身だった……?
これなら……少し前に進めるかもしれない。
「お疲れ様でした~」の声と共に、徐々にフロアに残っている人の数がまばらになっていく。
私は、少し明日の準備をするために、残業することにした。
気分転換するために飲み物を買いに、休憩室へと行く。
そこには自販機が3台置かれていて、社員が自由に買えるようになっている。
そのうちの1台の前。
「あ……」
これから買おうとしているのか、彰斗が立っていた。
こちらに背を向けているので、彰斗は私に気付いていない。
いつもなら、ここで引き返すところだけど――
『話し掛けてみたら?』
志帆のアドバイスが頭の中から聞こえる。
……よし、前に進むため。自分を変えるため。
私は勇気を出して、近付いた。
そして、彰斗が自販機から、ペットボトルを取り出したタイミングを見計らって……声を掛けた。
「あき……江田くん」
私は、あえて学生時代の呼び方で呼んだ。
「……え?」
彰斗は驚いて振り返る。そりゃそうよね、話し掛けるのは数ヶ月ぶりだもん……。
「……久しぶり、ね……」
「……ああ」
「……江田くんは、井村(いむら)くんと優花(ゆうか)ちゃんの結婚式に行くの……?」
井村くんと優花ちゃん、とは、今月末に結婚する新郎新婦のことだ。私達の共通の話題は今、それしかない。
「あ、うん……。永沢さんは?」
彰斗も、昔の呼び名で返してきた。それが、私達の今の距離だ。
「……行くよ。あの二人、絶対幸せになってほしいね」
「そうだな。俺、井村の幸せそうな顔見たら、泣くかもな」
彰斗は、フッと笑った。
彼の、親友を思う気持ちは、昔のままだ。
……あ、何だか普通に話せてる……。
「今から残業か?」
彰斗が尋ねてきた。
「うん、見積の件で、明日朝イチで顧客から電話かかってくるから」
「そうか、大変だな。俺も今から少し仕事するよ。……じゃあ」
彰斗は片手を挙げると、そのまま休憩室を出た。
……良かった。……ちゃんとしゃべれた……かな。
何より驚いたのは、思ったより気持ちが少し晴れやかなことだ。
私を縛っていたのは、私自身だった……?
これなら……少し前に進めるかもしれない。