クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
そして、約束の土曜日――。待ち合わせの時刻は、私の要望で午後三時。
なぜ土曜日なのに、待ち合わせが午前中ではなく、午後なのかというと。
それは、あまり早い時間から慣れていない男性と会ってしまうと、私の緊張が早々にMAXに達し、最後まで気力を保っていられるかどうか自信が無い、と思ったからだ。
『もうすぐ着く』
小野原さんからの連絡を受け、マンションの外で待つこと、二、三分。
歩道の脇に立つ私の横に、黒い車が停まり、助手席に乗り込む。
「いつも車に乗せて頂いてすみません」
「いいよ。俺が車の方が好きだから」
運転席の小野原さんは、今日は眼鏡をかけてなかった。素顔が何だか新鮮だ。
それに、スーツじゃない小野原さんもカッコいい。黒いジャケットが良く似合ってる。
私はというと、志帆から、「最初だし、あまり気負わない方がいいよ」と言われたので、今日は、イエローの薄手のカットソーとカーディガン、フレアスカートという、シンプルな服装にした。まぁ、元々派手な服は持ってないんだけど。
私達を乗せて、車はゆっくりと走り出す。
「あの、聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「今日は眼鏡はされてないんですね」
「ああ……以前は眼鏡じゃなかった」
「え?」
「何年か前に、仕事が忙しくなってきて、急に目が疲れるようになったんだ。その頃から仕事の時や完全にオフで家にいる時は、眼鏡をするようになったんだけど、土日予定のある時は、昔のクセでコンタクトにしてしまうんだ」
その方が落ち着くそうだ。
「じゃあ、普段、眼鏡姿を見てる私にとって、今日の小野原さんはすごくレアなんですね」
レアだなんて何かのゲームのキャラみたい。
と、自分で言っておいて面白くなった私はフフッと笑った。
「そうだな……でも、そのレア度はすぐ下がることになるから、残念だ」
「?」
「だって、これから週末、香奈と過ごす時間が増えれば、これが当たり前になるだろ?」
「……っ」
……今度は小野原さんが笑う番だった。