クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
せっかくなので、普段行ける近場の映画館ではなく、ドライブをしながら少し離れた場所へ行こうということになった。
目的地は、ここから三十分ほどの、海沿いにあるショッピングモール。
映画館の他に飲食店、ファッション関連や書籍など、百以上の店舗が入っている大型商業施設だ。
初めて行く場所だし、最近テレビの情報番組で、半日いても飽きない、と特集をやっていたのを見ていたので、期待度が高まる。
車で二十分くらい走ったところで、前方に青い輝きが見えてきた。
「あ、海……!」
それは徐々に近くなり、車はやがて海岸線と平行に伸びている道路に出た。陽光に照らされた海面の輝きで、目の前の視界が覆われる。
どこまでも続く水平線に、年甲斐も無く、心が踊る。
「お天気で良かったですね!」
「ああ。……でも、もしかしたら一雨降るかもな」
小野原さんが指し示した西の空の端から、どんよりとした雲が広がりつつあった。
ショッピングモールはそこから、すぐ近くだった。土曜日の午後ということもあり、広大な駐車場は満車寸前だったけど、何とか空いているスペースを見付けて停めることが出来た。
とりあえず、チケットを確保するために、映画館の方へ向かう。
エレベーターを降りると、そこは映画館のエントランスホールになっていた。焦げ茶色のカーペット状の床と、同系色の内装の空間が目の前に広がり、チケットカウンター、ドリンクやポップコーンなどの売店も見える。
そこに足を踏み入れた瞬間から、日常から少し解放されたように、ワクワクする気持ちが止められなくなる。
お目当てのSF映画は、四時台の回の予約が取れた。
それにしても……さっきから、たくさんの視線を感じる。
いや、正確に言うと、それは私に向けられたものではなく、小野原さんに、だ。
それと同時に、「何であんなフツーの女と歩いてるの?」という皆さんの心の声が聞こえてきそう。