クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「あの、私、ちょっとトイレに……」
「じゃあ、向こうで待ってるから」
一旦、小野原さんのそばを離れ、トイレに入る。別に用はなかったけど、何となく自分の身だしなみをチェックしようと思った。
はぁ……イケメンすぎる人の横に並ぶのも、別の意味で緊張する……。
化粧直し用に設けられた鏡の前で、小さく息を吐いていると――
「あれ? 永沢さんじゃないですか?」
右横から声を掛けられ、顔を上げた先に、茶色のストレートヘアの若い女性がいた。
「あ、黒本(くろもと)さん……」
彼女は同じ会社の営業事務の、黒本 紗希(さき)さん。確か二十五歳……だったかな。それほど親しいわけではなく、私が用事があって営業部に立ち入る時、挨拶をする程度だ。
彼女の存在は会社でも目立っている。何せ、美人で、スタイル抜群。今日も、膝上のワンピースからスラリと伸びた細い足が眩しい。
「永沢さんも映画ですか?」
「ええ。黒本さんも?」
「はい」と笑顔で答える彼女。
表情やメイクから、これからデートなのだと察しがつく。
でも、そんなに親しくない間柄なのでそれ以上聞くことも出来ず、
「私、ここ初めて来たんです」
と、当たり障りのないことを言ってみたりした。
「あ、そうなんですか? 私、今の彼氏と何回か来てるんですけど、ここ、シートも座り心地よくて落ち着けるし、キレイだし、おすすめですよ」
そっか、何回も……。そして、やっぱり彼氏さんと来てるのね。
「それじゃ、また会社で」と、黒本さんは笑顔で手を振って、トイレを出ていく。
すごく幸せそうだな……あんな可愛い人の彼氏って、どんな人なんだろう。
そう漠然と思いながら、私もトイレを後にした。
今、ちょうど何かの映画が終わったようで、ホールは土曜日の午後にふさわしく、かなり混雑している。
早く、小野原さんを探さなきゃ。
辺りを見渡すと、視線の少し先に黒本さんの後ろ姿が見えた。
なんとなく。
本当になんとなく、彼女を目で追って――
私は、心臓が止まったかと思った。
そこには、黒本さんに笑顔で手を振る、彰斗の姿があった――。
「じゃあ、向こうで待ってるから」
一旦、小野原さんのそばを離れ、トイレに入る。別に用はなかったけど、何となく自分の身だしなみをチェックしようと思った。
はぁ……イケメンすぎる人の横に並ぶのも、別の意味で緊張する……。
化粧直し用に設けられた鏡の前で、小さく息を吐いていると――
「あれ? 永沢さんじゃないですか?」
右横から声を掛けられ、顔を上げた先に、茶色のストレートヘアの若い女性がいた。
「あ、黒本(くろもと)さん……」
彼女は同じ会社の営業事務の、黒本 紗希(さき)さん。確か二十五歳……だったかな。それほど親しいわけではなく、私が用事があって営業部に立ち入る時、挨拶をする程度だ。
彼女の存在は会社でも目立っている。何せ、美人で、スタイル抜群。今日も、膝上のワンピースからスラリと伸びた細い足が眩しい。
「永沢さんも映画ですか?」
「ええ。黒本さんも?」
「はい」と笑顔で答える彼女。
表情やメイクから、これからデートなのだと察しがつく。
でも、そんなに親しくない間柄なのでそれ以上聞くことも出来ず、
「私、ここ初めて来たんです」
と、当たり障りのないことを言ってみたりした。
「あ、そうなんですか? 私、今の彼氏と何回か来てるんですけど、ここ、シートも座り心地よくて落ち着けるし、キレイだし、おすすめですよ」
そっか、何回も……。そして、やっぱり彼氏さんと来てるのね。
「それじゃ、また会社で」と、黒本さんは笑顔で手を振って、トイレを出ていく。
すごく幸せそうだな……あんな可愛い人の彼氏って、どんな人なんだろう。
そう漠然と思いながら、私もトイレを後にした。
今、ちょうど何かの映画が終わったようで、ホールは土曜日の午後にふさわしく、かなり混雑している。
早く、小野原さんを探さなきゃ。
辺りを見渡すと、視線の少し先に黒本さんの後ろ姿が見えた。
なんとなく。
本当になんとなく、彼女を目で追って――
私は、心臓が止まったかと思った。
そこには、黒本さんに笑顔で手を振る、彰斗の姿があった――。