クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
客でごった返しているせいもあって、彰斗は私に気付いていない。

黒本さんは彰斗に駆け寄ると、サッと自然に手をつないだ。

そして、二人で劇場へ続く方向に歩いていく。


……そっか……黒本さんの彼氏って、彰斗だったんだ。


二人とも同じ部署だし、お互いの距離が縮まるのも自然なことだ。

別に……今、彰斗がどこで誰と何をしていようと、もう関係ないことだ。

私だって、まだ彼氏ではないけど、小野原さんと来てるし。

早く、小野原さんの所に戻らなきゃ。

と、頭の中では分かってるのに、つい目が勝手に二人の姿を追ってしまう。

黒本さんは、何回も彼氏と来ている、って言ってた。二人はずいぶん前から恋人同士、ってことになる。


……私が引きずってる間、彰斗はもう次の恋を始めてたのね……。


無意識のうちに暗い思考に流されそうになる自分に気付いて、首を横に振る。


ダメダメ、余計なこと考えない。


せっかく前に進めそうなんだから。


私は、二人とは反対の方向へと歩き出した。


でも、重い気持ちは影のように、ぴったりと私の心に付いてくる。


次第に、周囲のざわめきは無音に、風景は色を失っていく。


あの日――


『お前との結婚は無い』


私にそう言ったくせに。


その子とは……




……明ルイ未来ガ、見エルンダネ……






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