クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
金曜日の飲み会は六時半スタートだった。
場所は、駅から少し離れた、大衆向けの居酒屋。
私は残業で遅くなり、着いたのは7時頃。店内に入ると、週末のサラリーマン達でテーブルは埋め尽くされていた。席の間を縫って進み、案内された奥の座敷のふすまを開けると、すでにもう四十人ほど集まっている。
「永沢さん、こっちですよ」
鈴木さんが手を振ってくれた。隣の席を確保してくれていたみたい。
靴を脱いで座敷に上がり、私は周りの人達に会釈しながら、鈴木さんの隣に腰をおろす。
「ごめんなさい、遅くなって」
「いいんですよ、そんなの。まだ何人か遅れて来るみたいですから。それより、何、飲みます?」
「じゃあ、カシスオレンジで……」
まだ柑橘系のお酒なら、飲める。ビールは苦く感じるのであまり得意じゃない。
早くも何人かはお酒が進みすぎて顔が赤くなっていた。
笹倉さんと森さんは、離れた場所に座っていたけど、それぞれのテーブルで何か盛り上がっている。
「それが、聞いてくださいよ」
と、鈴木さんもお酒が入るにつれて、口数が多くなっていった。彼女は一見、大人しく見えるけど、実に話上手なことに今、気付いた。周囲の皆も、彼女の話術に引き込まれるように聞いている。
すごいなぁ……。私も勉強しないと。それに楽しいし、今日来て、良かった。
それからは席の近い人と話したり、空腹を満たしたり、明るくも和やかな時が過ぎていった。
「永沢さん、隣いい?」
飲み会が始まって一時間ほど経過した頃。
ある人物が近付いてきた。