クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
横を見上げると、すぐそばに一人の男性が立っていた。

「あ、久保田さん」

もう宴会も半ばに差し掛かると、皆、最初に決めた席から離れて、思い思い自由な場所に座っている。

鈴木さんと反対側の私の横にいた人は、すでにおらず、ポッカリと席が空いていた。

その男性、久保田さんとは、職場では仕事の用事で話をしたことがあるくらい。確か私よりも二つ年上で、少し軽い印象はあるけど、愛想は良いし、物腰も柔らかく、誰とでも仲良くなれるタイプだ。

「あ、はい、どうぞ」

まだ誰かに自分から話し掛けることに躊躇してしまう私は、こういう寂しくなりがちな『自由時間』に人から声を掛けてもらえることは、とてもありがたいことだ。

「ありがとう」

久保田さんは、私の隣に座った。

「永沢さん、飲み会初めてだよね? 楽しんでる?」

「はい、とても。来て良かったです」

「俺も、永沢さんが来てくれて良かったよ」

「え?」

「久保田サーン、お酒の力を借りて女子社員口説くのやめてもらえます?」

横から、鈴木さんがひょこっと顔を出す。

「はは、厳しいな、鈴木さんは」

久保田さんは、困ったように笑った。

……口説く?……まさかね。

「そころで永沢さん、付き合ってる人いるの?」

「……ブッ」

いきなりの質問に、私は口に含んだお酒を吐き出しそうになった。……いや、少し吐いちゃったよ……。さりげなく、自分のおしぼりで拭いた。

「ほらー、久保田さん、やっぱりそうじゃないですか」

鈴木さんは聞き逃さない。

「聞いただけだよ」

「聞いただけ?うわっ、セクハラ」

「もし、そうだとしても、鈴木さんは口説かないから安心して」

「ありがとうございます、とーっても嬉しいです」

鈴木さんは、嫌味なほどニッコリ笑顔を見せる。

この二人は犬猿の仲なの……?見えない火花が散ってるような……そして、それに挟まれた私はどうしたら……。

「永沢さん、彼氏いるなら、はっきり言ってやった方がいいですよ」


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