クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
小野原さんの顔が頭に浮かぶ。

何て表現したらいいのかな……。

「……まだ付き合ってはないんですけど……」

「ほら、やっぱりいるんですね!?どんな人なんですか?」

言ってやった方がいい、って息巻いてた本人が、キラキラした目で聞いてくる。さっきまでとは違うその様子が可愛くて、つい答えてしまった。

「えっと……冷たそうな外見とは違って本当は優しくて、強くて、安心出来て……」

……そして、あなた達もご存じの方です……。

「残念でしたね、久保田さん!」

なぜか勝ち誇ったように、鈴木さんが言う。

「でも、まだ恋人じゃないんだよね?」

「はぁ~、その無意味な前向き思考が健気で、とても哀れです」

「うるさいぞ、鈴木」

また二人の間で火花が散ってる……。

すると、久保田さんは、

「じゃ、また来るよ」

と、小声で言うと席を離れていった。


「はぁ……あの人、この前、職場でも『永沢さん、彼氏いないのか?』って聞いてきたんですよ」

鈴木さんがため息をつきながら言った。

「え、そうだったんですか!?」

「ええ。知らない、自分で聞いて下さい、って答えたんですけどね。まさか、本気で聞いてくるとは思ってませんでした」

「いやいや、本気じゃないですよ、絶対。ただの興味本位ですって」

私は笑いながら、手のひらをヒラヒラと振った。

だって、もっと若くて可愛い子、他にもいるんだから、わざわざ私なんかに近付いてくる理由が分からないし。


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