クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「誤解を招くような言い方して、悪かった。俺が可愛いと言ったのは、香奈の寝顔だ。それ以外は見てない」

え……?

私は顔を上げた。

「ちゃんと説明するから、こっちに来てくれないか?」

小野原さんは、私の手を取り立ち上がらせると、ソファーに座らせ、自分も私の横に腰を下ろした。

「昨日、帰りに駅で待ってた。少し心配だったから」

「……心配?」

「飲み会初めてだと言ってたし、毎日残業で疲れてる体にアルコールはよく浸透するからな。ちゃんと帰れるか心配だった。無事に帰ったのを見届けたら、俺も何も言わずに帰ろうと思ったんだが……」

私は昨日の記憶の糸を一生懸命たぐりよせた。

「……あの時、倒れそうになった私を支えてくれたのは、小野原さん……?」

「ああ」

……そうだったんだ……。

あの腕が温かいと感じたのは、小野原さんだったから……。

「香奈のマンションに連れて帰ろうとしたんだけど、部屋の番号が分からない。いくら呼んでも起きないしな。鍵を探そうと、勝手に女性のバッグの中を漁るのも、気が引けた。だからタクシーに乗せて、俺の部屋に連れてきた。香奈をベッドに寝かせた後、俺は寝室に一歩も入っていない」

「……私、その時……服装どうでした……?」

「服? ああ…… 『暑い』と言ってたから、ジャケットだけ脱がせた」

「……そう……ですか」

じゃあ、その後、また暑くなって、自分で脱いだってことか……。もし、小野原さんが脱がせてくれてたとしたら、あんな脱ぎ散らかした状態じゃなく、おそらく、ちゃんと椅子かどこかに置いてくれていたと思う。

ともかく、今の状況が分かって、ホッとした。

「理解出来たか?」

「はい……私、てっきり……」

「俺に抱かれたかもしれない、って想像した?」

小野原さんの目が、いたずらっ子のように笑っている。

「なっ……してま……っ」

してません!、と言おうとしたけど、さっきの取り乱しようからして、バレバレだ。

代わりに、蒸気が吹き出すように顔が熱くなくるのが分かった。


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