クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
『聞いてない、って何が?』

「何が?じゃないわよ!お見合い相手、トモくんだったの!?」

『ああ、それねぇ。バレちゃった?』

何が、バレちゃった、よ!

私のこめかみには多分、青筋が走ってる。

「どういうことよ」

『谷山さんの奥さんが以前、知り合いの方のお見合いをお世話したことがある、って聞いたから、香奈のこともお願いしようかと思ったら、ご主人が、うちの息子はどうか、って。もちろん、正式にお見合い相手がトモくんと決まったわけじゃないのよ。とりあえず、顔合わせ、ってことで』

「ちょっと、そんなこと、谷山さんのところに頼まないでよ。恥ずかしいじゃない!それに、トモくんだって困っちゃうでしょ!とにかく、この話、無かったことにしてよね。お母さんから、ちゃんと伝えてね!」

私はそう言い放つと、一方的に電話を切った。

……はぁ。何でこんなことに。

私はため息をつくと、ダイニングに戻った。





「……あれ、おじさんとトモくんは?」

そこには二人の姿は無かった。

「ああ、お父さん、楽しくて酔いが早く回ったみたいで、潰れちゃったの。今、智之が奥の部屋に運んで行ったわ。ごめんなさいね」

と、おばさんが、苦笑しながら言う。

テーブルの上の料理の皿や食器は、どれもほとんど空になっている。

「たくさん食べてくれて嬉しいわ。私、少しでずつ片付けておくから、香奈ちゃんはゆっくりしててね」

「いえ、そんな、私も手伝います」

私もおばさんと一緒に片付けを始めた。





台所の流し台に並んで、洗い物をする。

「うち、息子しかいないから、きっと娘がいたらこんな感じなのね」

フフ、とおばさんが笑う。何か嬉しそうだ。

どうしよう、私が本当に嫁に来ると思っていたら……。すごく上機嫌だし、私から、そんなつもりないんです、って言うのもなぁ……。今回はお母さんが悪いんだし、後はお母さんに任せて、トモくんには私から謝っとこう……。

「父さんをちゃんと寝かせてきたよ」

その時、トモくんが台所に顔を出した。



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