クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
この時間帯、駅に向かう人は少なく、乗客も数えるほどしかいない。

ガラリとしたバスの一番後部座席に座って、斜め前の窓から、対向車線を通り抜けて行くヘッドライトや町の明かりをぼんやりと眺める。

頭に浮かぶのは、小野原さんのこと。


……答えは出てる、か……。


知り合って(向こうは私のことを以前から知ってたみたいだけど)、一ヶ月が過ぎた。

最初は、「こんなに冷たそうな人、絶対あり得ない」と思ったけど、ホントはそうじゃなくて、優しくて、広くて、私のことを心配してくれて、約束なんかしてないのに駅で待っててくれるような人……。

時々、あの人のペースに巻き込まれることもあるけど、それが嫌じゃない自分がいる。

私の心の中、小野原さんが占める割合が少しずつ、広がってきている。


……これって……


好きになってきてる……ってことよね……。



でも、いまだに一歩踏み出せないのは……私が恋で傷付きたくないと慎重になってしまってるから。

トモくんにも言ったけど、何で私なのか、って冷静になった時、思うことがあるし。

それに、昨日、久保田さんが噂してるの聞いちゃったしな……。

だけど、「小野原さんもそう思ってるんですか?」とか聞いたら、超失礼極まりない女だと思われるのは間違いない。

……はぁ……また自分の弱い所が出てきてる……。

こういう時は、親友に聞いてみようか……。

思考が徐々に暗い方向に行きかけていた私は、志帆にラインしてみた。

『小野原さんは、私を男性経験が少なそうな押せば落とせる簡単な女だと、思ってると思う?』

志帆からすぐに返事が来た。

『何それ? そんなわけないでしょ。ただ女が欲しいだけなら、とっくに美人な彼女と付き合ってるわよ。だから、自信持ちなさい』

うーん……
……なんか、ディスられつつ、励まされた。

そして、さらにメッセージが。

『相手がどう思ってるとか気にしすぎよ。それはとりあえず置いといて、心に素直に従って行動するのも大事よ』

……素直、って、難しいよ……。引かれたらどうしよう、とか考えちゃうもん……。

グダグダ悩んでるうちに、バスは駅に着いた。



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