クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
腕時計を見ると、午後九時。

土曜日のこの時間は、まだ駅前でも人通りはある。バスを降りて、駅を目指す。

すると、途中のベンチに誰か、頭を下にして、座っているのが見えた。

近付くにつれ、それが若い女性であることが分かる。

……気分悪いのかな……?

複数の通行人がその前を通るけど、皆、我関せず、といった風に、ただ通り過ぎていく。

私もそのまま通り過ぎようとしたけど、気になって、その女性に歩み寄った。

酔ってるとか……?

昨日の自分と重なってしまい、私は放っておけずに、思い切って声を掛けた。

「……あの、大丈夫ですか?」

「……」

返事が無い。よっぽど具合が悪いのか。だったら、なおさらここに置いておけない。

「大丈夫ですか?」

再度の呼び掛けに、その人はゆっくりと顔を上げた。

そして、目が合って――。

「!」

びっくりした。



「……朱音さん……」


そう、小野原さんの妹の朱音さんだった。

朱音さんも、驚いたように目を見開いていたけど、すぐに不機嫌な顔になった。

「ちょっと、あんた今、私見て嫌な顔したでしょ」

「……」



いやいや、それ、こっちのセリフだから。


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