クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
振り返ると、黒い短髪で、体格の良い男性が立っている。歳は、私より少し上くらいか。

今度は誰?と思っていると、その男性はいきなり朱音さんの腕を引っ張ると、

「ほら、行くぞ」

と言った。

……今度こそ、知り合い……?

ところが、チャラい男達は黙っていない。

「何だテメェ」と、今、現れた男性の肩を掴んだ。

すると、その男性は、

「あ?」

と振り向きざまに、ギロリとチャラ男達をにらみ付けた。

……めっちゃ怖い……。

「……っ」

男達はあきらめたのか、「チッ」と小さく吐き捨てるように言うと、立ち去って行った。

ひとまず、ホッとする。

助かった……けど、この人誰?

まさか、新たなナンパじゃ……朱音さん美人だから惹き付けられたか。

「ちょっと、離してよっ」

朱音さんが腕を振り払った。

「助けてやったのに、礼も無しか」

「あんたに頼んでない!」

「お前な」

やり取りから見て、どうやら、初対面ではなさそう。

……どちらにしても、助かったんだから、お礼は言っとこう。

「あの、ありがとうございました」

「え?ああ……」

その男性は初めて私の存在に気付いたかのように、こちらを見た。

「朱音、この人は?」

「……お兄ちゃんと同じ会社の人」

朱音さんがサラリと説明した。すぐに、「彼女とかじゃないからね」と付け加えるのも忘れずに。

それにしても、さっき男性が朱音さんの名前を呼んでたな……。やっぱり知り合いか、友達だったのか……。はっ、もしかして……。

「あの、もしかして、朱音さんの彼氏さんですか?」


「そんなわけないでしょっ!」
「そんなわけないだろ」

私の言葉に、二人が同時に発言した。

「……すみません」

「俺は、こいつの兄貴の友人だ」

「…そうなんですか……すみません……え?」


……じゃ、小野原さんの……?


「私、帰るから」

朱音さんが歩き出した。でも、その顔色は悪い。

「朱音さん、大丈夫?」

「もう、放っといて」

「朱音、どうかしたのか?」

その男性が尋ねた。

「あの、何か体調悪いみたいで……」

私が代わりに答える。

「じゃあ、圭一呼んでやるよ」

……圭一……って、小野原さんの名前だ。

朱音さんがハッと振り返る。

「いいってば!子供じゃないんだし、こんな所まで来てもらわなくても」

「もうその辺まで来てるぞ。久々に地元に集まって、俺達、今から飲みに行くつもりだったから」

……地元……?

「えっ?小野原さんの地元って、この辺なんですか?じゃあ、朱音さんも……?」

「は? 兄妹なんだから、当たり前でしょ!」

……ですよね。ていうか、体調悪そうでも、威勢は変わらないのね……。




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