クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
朱音さんは、私から顔を背けると駅の改札の方へ向かって歩き出した。

「あれ……?朱音さん、電車乗るの?家この辺じゃなくて……?」

「……今は大学の近くに部屋借りてるのっ。今日はこの近くで昔からの友達と遊んでたんだけど、気分悪くなったから、先に出てきたのよ」

立ち止まって答える朱音さんの顔色は、やっぱり良くない。

……これは、ちょっと放っとけない様子……。

「あのー……とりあえず、どこかで休んだらどうかな? こんな風の当たる所にいたら、もっと体調悪くなるよ。……あそこは?」

私は駅から近い、全国展開しているセルフサービスのカフェを指差した。

ずっとここにいるわけにもいかないし、家まで送ってあげる、っていうような間柄でもないし(そんなこと言ったら、本気まで嫌がられそうだし)、とりあえず、そう提案してみたんだけど。

「そうだな」

と、その小野原さんの友人もうなずく。

「あの、私、そこまで連れていきますから」

「何で、あんたと行かなきゃなんないのよ……」

「私も今から帰るの。駅に向かう方向が一緒だから、そのついでだと思ってくれていいよ」

「……」

朱音さんは、もう何も言わなかった。

「ほら、行こう」

「指図しないで」

私と一緒に朱音さんはゆっくり歩き出す。

……もう、調子悪い時ぐらい、素直になってよね……。

もう、だいぶ慣れたからいいけど。

「俺も行く」

小野原さんの友人は、私達の後から着いてきた。

スマホをいじっていたから、もしかしたら小野原さんに連絡を取ったのかもしれない。




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