クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「香奈!何でここに?」

「……こんばんは……えっとですね……」

小野原さんの顔を見ちゃったら、今朝のことを思い出して何だか落ち着かないけど、今はそんなこと考えてる場合じゃない。

私は、朱音さんの様子と、ここにいる経緯を説明した。

「そうだったのか。……朱音、大丈夫か?」

「……お兄ちゃん……ごめん」

朱音さんは、顔を伏せたまま返事をした。

「香奈……ごめんな。世話になったな」

「いいえ、そんな……」



すると、小野原さんの横から、茶髪の男性が一歩前に出てきた。

「あ、もしかして圭一の彼女? 名前で呼ばれてたけど」

「いえ、違いま……す……」

「カナちゃん、てゆーの?俺、佐伯 亮真(さえき りょうま)。よろしくね」

佐伯さんはそう言いながら、私の横に座った。

「は、はぁ……」

やっぱり、いきなり初対面の男の人に、親しげに話しかけられることに慣れていない私は、少したじろいてしまう。

……でも、よく見ると、この人もかなりの美形だ。笑顔がキラキラしてて眩しいっ……。

「おい、亮、どけ」

上から低い声が降ってきて、顔を上げると--

「……!」

小野原さんが、めっちゃ冷たい目で佐伯さんを見下ろしてる……!視線だけで体が凍り付きそう……!

「それと、馴れ馴れしく名前で呼ぶな。早くどけ」

「……彼女じゃないなら、別にいいだろ」

「言っとくが、香奈は朝まで俺のベッドで寝てたんだぞ」

「ちょっ……小野原さん!」

ちょっと! 何、張り合ってるんですかーっ!

「じゃあ、お前、さっき寝不足だって言ってたのは……」

「……香奈がなかなか寝かせてくれなかったんだ」

「小野原さんっ!」

私は、バン、とテーブルを軽く叩いた。

「間違ってないだろ?」

「間違ってないけど、何か間違ってます!確実に!」

気付けば、高橋さんは、「へぇ……」とだけ言ってこっちを見てるし、佐伯さんはニヤニヤしながら、「カナちゃんて意外と積極的なんだ……」とか、つぶやいてるし!

違う!語弊が有ります!と、叫ぼうとした時、横から、朱音さんの手がぬうっと出てきて、ガシッと私の腕を掴んだ。

そして、顔だけを上げて、

「ちょっと……どういうことよ……!」

と、具合悪い人には見えないくらいの、しっかり力のこもった目で、私をにらんだ……!

……ヒィィッ!

「小野原さん、何とか言って下さい!」

私は助け船を求めたけど、言い出した本人は、しれっとした顔のままだ。

ちょっと、この空気、何とかしてーっ!



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