婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
婚約の条件はお試し同居
十月下旬の日曜日、大安吉日。
本日はお日柄もよく――。
見上げた空は高く空気は澄み切っていて、秋らしいカラッとした晴天に恵まれた。
そろそろ晩秋を迎える季節だけど、頬にそよぐ風はほんのり温かくとても優しい。


気候のいいこの季節は、絶好のウェディングシーズン。
都内でも有数の高級ホテルのロビーは、結婚式の招待客で溢れ返っている。
ホテルの宿泊棟から外に続く石畳の先に佇むチャペルでは、さっき見た時とは違う花嫁さんがドレスのヴェールをはためかせていた。


ちょっとクラシカルな造りのチャペルの向こうには、東京湾が広がっている。
海の青と花嫁さんの白。
そして、爽やかな秋晴れの空の薄い水色のコントラストが、何とも言えず絶妙。


いいなあ。
やっぱり私も結婚式はドレスがいいなあ~……なんて思いながら、私は自分の身体を見下ろした。
花嫁さんの白ではないけど、これでも一応、おめでたい席を華やかに彩る艶やかな紅色、秋らしい桔梗模様の豪華な着物姿だ。


実を言うと……かく言う私も、結婚式でないけれど、それに通じる第一段階の真っただ中にいる。
今日、私、生駒帆夏(いこまほのか)は、この先続く幸せな人生の、記念すべき第一日目をスタートさせたところ。
いや……まだ、スタートラインに立っただけ……かな?
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