婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「あの後接点なさそうだったのに、まさか本人に聞き込み済みとか。『そんなこと聞いて真剣に答えてもらう時間あったの?』ってツッコミたいとこだけど」

「えっ!? あ、あのですね……」


考えもしなかった鋭いツッコミにしどろもどろになってしまう。


確かに、オフィスにいる間は、樹さんのそばをうろつく時間もなかった。
家でも一緒にいるから聞き出せたというだけのこと。
それをまだ知られるわけにはいかない。


だけど、青木さんが気になってるのはそんなことではないらしい。


「『そういう女じゃない』って言われて、素直に信じちゃったの?」

「え?」

「正直なところ、私はそう言って黙らせただけだと思う」


青木さんは大きな溜め息をつくと、椅子の背にもたれかかり、ギッと小さな音を立てて軋ませた。


「帆夏ちゃんさ、やっぱ春海君に都合よく扱われてるだけだよ。今はまだ振り回されてるだけだから放っておけるけど……。もしアイツが『その気』になったら、どうする気?」

「その気?」


青木さんの言いたいことがイマイチ私にはよくわからない。
樹さんが『その気』になったらって。
いや、いっそその気になってもらえた方が、私との婚約にも頷いてもらえる可能性が高くなる。
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