婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
当然、仕掛ける余裕なんかあるわけない。
樹さんを落とすどころか私ばかりがどんどん落とされていってる気がして、これじゃあいけない!と思うのに……。


「だからってなにもオフィスでまでっ……! こんなのセクハラじゃないですかっ」


しかもあろうことか、この一週間で樹さんの意地悪は確実にエスカレートしてる気がする。


昨日まではオフィスでこんなことされなかったから二人だけの『勉強会』もなにも警戒してなかったけど、始まってみたら私は樹さんのおもちゃも同然だったのだ。


そう抗議する間も私のうなじをなぞる指にゾワゾワして、私は慌てて樹さんの手を掴んで止めた。
「セクハラだあ?」と、彼が眉を寄せる。


「お前、よく俺にそんなこと言えるな。っつーか、俺がお前にセクハラしたって、周りのヤツらみんな、お前が喜んでるとしか思わないぞ。むしろ、手叩いて祝杯挙げてくれるんじゃないか?」

「ううっ……」


樹さんの手をギュッと握り締めたまま、真っ赤な顔で悔し紛れの唸り声を漏らす。
まったくもって樹さんの言う通りだから反論出来ない。


「ほら。唸ってないで、この十五分で俺が話したこと、簡単でいいから説明してみろ。少しも身になってなかったら、それ相応の制裁を与えるぞ」

「無茶言わないでください……。話に集中出来たはずがないじゃないですか……」
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