婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
ギシッとベッドが軋む音を聞きながら、私は乱れた胸元を両手で抱きしめ、身体を横向けて樹さんの視線から逃げた。


樹さんは私の背中で胡坐を掻いて座っている。
はあっと大きく深い息を吐くのが聞こえた。


「ごめ……私、嫌なんじゃなくて……」


言い訳にしか聞こえないだろうと思いながら、私はそう言っていた。
そして、自分でもわからなくなる。


樹さんの言う通り、私は樹さんへの『好き』を恋にしようと必死だっただけなんだろうか。
だからこうやって樹さんに強引にされると心が追い付かなくて中途半端に逃げて……。


恋する覚悟が必要だったのは、私だったんだろうか……?


――でも。


「い、樹さんだって……わ、私のこと好きじゃないのに、こんなの……」


身体を小さく丸めながら口走ると、樹さんが勢いよく髪を搔き乱す気配が伝わってきた。
背中のスプリングが小さく沈むのを感じる。


「俺の方は、女に対しては抱けるか抱けないかの二択の気持ちしかない。帆夏は意志に関係なく抱かなきゃいけない女。……その気になりゃもっと早く手出せた」

「っ……」

「これでも待っててやったんだよ。神になったつもりで、悠長に」
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