婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
強引で大胆不敵な将来の誓い
どのくらいボーッとしてしまった後か……。
ハッと我に返ると同時に携帯に飛びつき、樹さんに電話をかけた。


だけど、ちゃんと呼び出し音は鳴るのに、何度かけても応答してくれない。
LINEもメールも送ったのに、反応がないことに焦れながら、樹さんの呟いた言葉を思い出した。


『混乱してきた』


その言葉が大きく胸を抉るように刺さって、私は携帯を操作するのを止めた。
言葉の意味を自分の中で噛み砕いてから、そっと携帯を手から離した。


「……調子狂うって……」


聞いたこともないくらい余裕のない声で、樹さんはそう言った。
思い出しただけで、胸に沁みてきゅうっと苦しくなる。


どの連絡にも、樹さんはなに一つ反応を返してくれない。


『混乱してきた』の一言が、ずっしりと重く感じる。
今なにをしても困らせるだけのような気がして、私はそれ以上の連絡は出来なかった。


その夜、樹さんの部屋で座り込んだまま、眠れない一夜を過ごした。


気持ちだけが昂って急降下して目まぐるしい。
頭はまるで麻痺したように働かず、身体の疲れも痛みも感じない。


冬を迎える遅い夜明けを待って支度をして、私はいつもならまだ寝ている時間に部屋を出た。
樹さんと暮らす部屋に一人でいると、気が遠くなりそうなくらい時間が長くて、気が狂いそうだった。
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