婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
そう呟く青木さんを、私はただジッと見つめる。
やがてパソコンが起ち上がりメールを確認したのか、青木さんは頬杖をついて「ふ~ん」と唇を尖らせた。


「春海君、いないんだ? だから帆夏ちゃんも、私のこと気にする余裕なかったのね」


カチカチとやけにゆっくり音を立ててマウスを操作してから、青木さんが私に顔を向けた。


「それとも、全然気にしてなかった?」

「……」


気にしてなかったわけじゃない。
私のこと応援してくれてるって思っていた先輩だもの。
これを『裏切り』と思いたくないし、話してくれる気があるなら、ちゃんと真意を確かめたい。


「青木さん。どうして昨夜……」


半分促されるように言いながら、私は膝の上でギュッと手を握り締めた。


「それほど気になってはいなかったみたいだね。……春海君から事情は聞いてた?」


私が問い掛けたはずなのに、青木さんの方が私に質問を繰り出してくる。
いつもとは違う意地悪な空気に、探りながらも見抜いてるのが感覚で伝わってきた。


「……帆夏ちゃん、ゆっくり話そうか」


小首を傾げてそう言われて、私はゴクッと喉を鳴らしてから、黙って小さく頷いた。
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