婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
遅れてきた青木さんが、毎朝のルーチンワークを済ませるのを待って、この時間ではほとんど社員の姿がない食堂に向かった。
自販機が並ぶ入り口付近には飲み物を購入する社員の姿が見えるけれど、テーブルが並んだ食堂は、厨房だけが騒がしい。
テーブルには、こんな時間になにをしてるんだか、ポツリポツリと人が座っているだけ。
私は窓際のテーブルに足を進める青木さんにただついて行った。
「はい、これ。……記念に取っておきたかったでしょ」
窓際ギリギリまで進んで行くと、青木さんは私に拳を突き付けた。
私の胸の前で開かれたその手の平には、昨夜の映画のチケットの半券がのっている。
「……ありがとうございます」
それだけ呟き、私はチケットを摘み上げた。
言いたいことも聞きたいこともたくさんあったのに、私はただ目を伏せる。
そんな私に、青木さんはフッと息をつきながら笑って、大きな窓ガラスに背を預けた。
「ごめんね。帆夏ちゃんが探してるのが、これとは思わなかったから。時間過ぎても誰も来ないし、いいや観ちゃえ!って思って中に入ったら、春海君がいて驚いたわよ」
「……」
「おかげで、意外と上手くやってるのもわかっちゃったけど……」
「本当にそうですか」
いつもの調子で軽く言う青木さんを遮って、私はチケットを握り締めながらそう言った。
自販機が並ぶ入り口付近には飲み物を購入する社員の姿が見えるけれど、テーブルが並んだ食堂は、厨房だけが騒がしい。
テーブルには、こんな時間になにをしてるんだか、ポツリポツリと人が座っているだけ。
私は窓際のテーブルに足を進める青木さんにただついて行った。
「はい、これ。……記念に取っておきたかったでしょ」
窓際ギリギリまで進んで行くと、青木さんは私に拳を突き付けた。
私の胸の前で開かれたその手の平には、昨夜の映画のチケットの半券がのっている。
「……ありがとうございます」
それだけ呟き、私はチケットを摘み上げた。
言いたいことも聞きたいこともたくさんあったのに、私はただ目を伏せる。
そんな私に、青木さんはフッと息をつきながら笑って、大きな窓ガラスに背を預けた。
「ごめんね。帆夏ちゃんが探してるのが、これとは思わなかったから。時間過ぎても誰も来ないし、いいや観ちゃえ!って思って中に入ったら、春海君がいて驚いたわよ」
「……」
「おかげで、意外と上手くやってるのもわかっちゃったけど……」
「本当にそうですか」
いつもの調子で軽く言う青木さんを遮って、私はチケットを握り締めながらそう言った。