婚前同居～イジワル御曹司とひとつ屋根の下～
感情を抑えた私の声に、青木さんが黙って私を見やる。
そして、ひょいっと肩を竦めた。


「……悪意的に取られちゃった？」

「私がバカだったので、それはなにも言いません。でも、理由が知りたいです。……青木さん、もしかして樹さんのこと……」


探るように言いながら、胸がドキドキと騒ぎ出すのがわかる。
チケットを握り締めた手を胸に当て、無意識にゴクッと喉を鳴らす私に。


「そうね。好きだったわよ。春海君のこと」


思いの外あっさりと、青木さんはそう言った。
けれど。


「出会ってからの五分間だけ」


シレッと続けられた言葉に、私は何度も瞬きしながら青木さんを見つめた。


「……え？」

「だから、五分間だけ。だって、そこそこのイケメンだし、社長御曹司だもの。私だけじゃない。他の同期だってみんな春海君を狙ってたわよ」


どういう反応を返していいかわからない私に、青木さんはクスッと笑って小さく肩を竦めた。


「でも腹立たしいことに、春海君は自分がどう見られるかってことをよ～くご存じなのよね。同期同士初顔合わせの語らいの場で、私たちに軽～く釘を刺したのよ。『俺、得にならない女とは遊ばないから』って」


それを聞いて、私はギョッとして目を見開いた。
私の反応を確認して、青木さんは肩を揺らして笑い出す。
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