婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「腹立つでしょ~?」

「ほ、ほんとですね。何様かって言いたい」

「私たち同期の女性陣も反応は同じ。見た目と御曹司って肩書だけで目を眩ませた自分を棚に上げて、『なんなの、あれ』って罵った」


もし私がその場にいても、やっぱり同じように心の中で罵っただろうか……。
そんなことを想像して黙り込む私に、青木さんは「でも」と言葉を続けた。


「ある意味、誠実よね。相手が勝手に夢見ないように、対象外だって宣言したわけだし。だから私は、本気だろうが遊びだろうが、春海君がどんな女なら相手にするのか興味があったの。私が見てきた限りじゃ、宣言通り『得になる』女よ。メインバンクの頭取令嬢とか、取引先社長の秘書とか」


そう言って、大きな息をついてから、青木さんはチラッと私に目を向けた。


「帆夏ちゃんは、私たち一般庶民に比べたら春海君の眼鏡に適うお相手だけど、春海君の気持ちを動かすのは不可能だって思ってた。失礼な言い方だけど」


さすがに胸にグサッとくる言葉だったけど、まさに樹さんにも昨夜言われた通りだ。
しゅんとしながら俯くと、青木さんも自分の靴の爪先に目線を落としていた。
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