婚前同居～イジワル御曹司とひとつ屋根の下～

そう言いながら身を屈めて、私の顔を大きく覗き込んでくる。
一気に縮まる距離に、私は大きく喉を鳴らしてしまった。


私の反応をそこまで観察すると、樹さんは興味がそがれたように私にシレッと背を向けた。
けれど、その手には私のスーツケースの取手が握られている。


「あ」


私も慌てて靴を脱ぎ、先にズンズン進んでいく樹さんの背を追った。
そして、採光のいい広いリビングルームを前にして、再び足を止める。


十五畳近くはあると思う、広々としたリビングには、ゆったりとした上質なソファにホームシアター張りの大きなテレビが置かれていた。
その奥には三つドアが並んでいる。
呆然としながらリビングに足を踏み入れると、立派なカウンターキッチンも見えた。


ここで三ヵ月限定とは言え、樹さんと一緒に生活するんだ……。
今更ながら実感が湧いてきて、私は無意識に両方の手をギュッと握り締めていた。


一人緊張感を高まらせる私をチラ見するだけで、樹さんは奥の一番右端のドアの前に、私のスーツケースを置いた。
そして、腰に手を当て軽く首を傾げて私を見据えてくる。


「ここ、お前の部屋」

「わ、私の……？　……って」