婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
会場全体に樹さんがさっと目を走らせた。
その視線が私の上でピタッと止まる。
視線が宙で交わった瞬間、樹さんが口元に笑みを湛えて、マイクを通さずに「帆夏」と私の名前を呼んだ。
「呆けてないでこっちに来てくれないか。お前がいないと、カッコつかない」
樹さんの視線が、まっすぐに私を射抜いている。
彼の視線と差し伸べた手の向く先を追うように、会場を埋め尽くす招待客の視線が、後方の壁際の私に集中した。
「帆夏」ともう一度呼ばれても動けない私に、樹さんは笑みを引っ込め、わずかに眉を寄せた。
そのまま壇上から降りて来ながら、聞き慣れたいつもの意地悪な調子で呼びかけてくる。
「な~にをバカ面してんだよ、お前。こっちに来いって言ってんのに」
樹さんが歩を進めるごとに、海が割れて私の目の前にだけ道が出来ていくような感覚に陥る。
まるで花道を歩くように、一歩一歩まっすぐ進んでくる樹さんを見つめて、私は凍り付いたまま。
たくさんの視線と歓声を一身に浴びる彼が近付くごとに、それは私にも波紋のように押し寄せてくる。
「帆夏」
目の前で立ち止まった樹さんが、溜め息混じりにはっきりと私の名前を呼んだ。
その途端、私たちを取り巻く歓声が、一際大きくなったのがわかった。
その視線が私の上でピタッと止まる。
視線が宙で交わった瞬間、樹さんが口元に笑みを湛えて、マイクを通さずに「帆夏」と私の名前を呼んだ。
「呆けてないでこっちに来てくれないか。お前がいないと、カッコつかない」
樹さんの視線が、まっすぐに私を射抜いている。
彼の視線と差し伸べた手の向く先を追うように、会場を埋め尽くす招待客の視線が、後方の壁際の私に集中した。
「帆夏」ともう一度呼ばれても動けない私に、樹さんは笑みを引っ込め、わずかに眉を寄せた。
そのまま壇上から降りて来ながら、聞き慣れたいつもの意地悪な調子で呼びかけてくる。
「な~にをバカ面してんだよ、お前。こっちに来いって言ってんのに」
樹さんが歩を進めるごとに、海が割れて私の目の前にだけ道が出来ていくような感覚に陥る。
まるで花道を歩くように、一歩一歩まっすぐ進んでくる樹さんを見つめて、私は凍り付いたまま。
たくさんの視線と歓声を一身に浴びる彼が近付くごとに、それは私にも波紋のように押し寄せてくる。
「帆夏」
目の前で立ち止まった樹さんが、溜め息混じりにはっきりと私の名前を呼んだ。
その途端、私たちを取り巻く歓声が、一際大きくなったのがわかった。