婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
樹さんの言葉を自分の言葉で言い換えて訊ねながら、私は戸惑って樹さんを見つめた。
相変わらず引き締まった上半身を惜しげもなく披露した姿で、樹さんは私の反応に更に首を傾げる。


「い、一緒じゃないんですか?」


思わず疑問をそのまま口にしてしまう。
今度は樹さんの方が不思議そうに目を丸くして、「へ?」と短く聞き返してきた。


「だ、だって……」


説明しようと私が口を開いた瞬間、聞かなくても合点したようだ。
樹さんはさっきと同じ意地悪な笑みをニヤッと浮かべてから、肩を揺らしてクックッと笑った。


「なにを期待してたんだか知らないけど、お試し同居なんてただの建前だよ。三ヵ月後にはお互いから『無理』って言って破談にするんだから、寝室まで一緒にするわけないだろ」

「えっ……」

「実態はただのルームシェア。そう思ってくれていい」


樹さんはシレッとそう言うと、『私の部屋』のドアの前から離れて、一つ置いた一番左端のドアを開けた。


「俺の部屋はこっち。あ、勝手に入るなよ」


その声に導かれるように、私もリビングを横切って、ドア前に置かれたままのスーツケースの隣に立ち尽くした。
それを見て、樹さんは軽く肩を竦めた。
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