婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「そういうわけだから。変な期待も気負いもやめてくれ。家事はそれぞれ自分の分だけ。メシももちろん別。……ああ、ルール決めておきたいのは、風呂の順番くらいかな」

「ルームシェア……」


私は部屋の中を戸口から眺めて、呆けた。
一人部屋としても十分な広さはあるけれど、そこにあるのは一台のシングルベッド。簡単なデスク。
そして、備え付けのクローゼット……。
大学時代の親友が一人暮らしをしている部屋とそう変わりはない。


お試し同居。私にとっては三ヵ月のテスト期間。
そんなつもりで気張ってきたけど、どうやら『一人暮らし』とそう変わりはないらしい。
その事実に心のどこかでホッとしながら、私はそっと樹さんを見遣った。


彼は肩から掛けたタオルで、再びワシャワシャと髪を拭っている。


「まあ、三ヵ月。お互い我慢すればそれで済むから」


私の視線に気付いて、樹さんはどこまでもつれない態度でそう言い放った。
その言葉に、テストなんかするまでもなく、私を妻として迎えるつもりはまったくないってニュアンスが感じられた。
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