婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
でも、樹さんにとっては違う。
父の会社との合併で業績拡大が見込まれるこの会社は、将来樹さんが継ぐ会社だ。
彼にとっての宝物は、この会社の為に働く社員一人ひとりだと、私は恋に落ちたあの時からちゃんとわかっていたのに――。
私は打ちひしがられた気分で、しゅんと肩を落とした。
「……すみませんでした」
資料に目を伏せ、ボソボソと小声で呟くと、向かい側から樹さんの大きな溜め息が聞こえた。
「でも、やる気がないわけじゃなくて、これでもお仕事は頑張ろうって思ってて……」
「わかればいい。……っつーか、生駒社長のコネ入社の分際で、あんまり逆方向に突っ走ると敵作るだけだぞ」
呆れた口調は変わらないけど、少しだけさっきより柔らかさを感じて、私はおずおずと顔を上げた。
「……まあ、お前はどうせ、いずれどっかのボンボンと見合い結婚とかするんだろうし。せいぜい二年くらいで寿退社する腰掛けだろうから、どんなに敵作っても問題なさそうだけどな」
その言葉に一瞬ギクッとしてから、私はそっと目線を上げた。
私の真正面で、樹さんはキュッと唇を引き結んで、頬杖をつきながら右手でペンを回している。
父の会社との合併で業績拡大が見込まれるこの会社は、将来樹さんが継ぐ会社だ。
彼にとっての宝物は、この会社の為に働く社員一人ひとりだと、私は恋に落ちたあの時からちゃんとわかっていたのに――。
私は打ちひしがられた気分で、しゅんと肩を落とした。
「……すみませんでした」
資料に目を伏せ、ボソボソと小声で呟くと、向かい側から樹さんの大きな溜め息が聞こえた。
「でも、やる気がないわけじゃなくて、これでもお仕事は頑張ろうって思ってて……」
「わかればいい。……っつーか、生駒社長のコネ入社の分際で、あんまり逆方向に突っ走ると敵作るだけだぞ」
呆れた口調は変わらないけど、少しだけさっきより柔らかさを感じて、私はおずおずと顔を上げた。
「……まあ、お前はどうせ、いずれどっかのボンボンと見合い結婚とかするんだろうし。せいぜい二年くらいで寿退社する腰掛けだろうから、どんなに敵作っても問題なさそうだけどな」
その言葉に一瞬ギクッとしてから、私はそっと目線を上げた。
私の真正面で、樹さんはキュッと唇を引き結んで、頬杖をつきながら右手でペンを回している。