婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
今日一日、これで終わらせてしまってはいけない!
せめて夕食だけでも。
一日同じ屋根の下にいただけの休日にしない為にも、夕食を作って樹さんをお誘いしよう。


それで、どんな食べ物が好きかとか、普段の休日はなにをして過ごすのかとか、話題を振ってみよう。
……答えてくれないかもしれないし、むしろ夕食自体拒否られるかもしれないけど。


よし!と自分を鼓舞しながら握り拳を作って、私は勢いよくドアを開けてリビングに飛び出した……のだけれど。


「あ、あれ?」


リビングにいるかと思っていたのに、樹さんはそこにいなかった。
誰もいないリビングの電気は落ちていて、カーテンも開けっ放し。
ちょっと遠くの空に、高層ビルの明かりがポツポツと光っているのが見える。


そっと振り返って見ると、樹さんの部屋のドアの隙間からも、明かりは漏れていない。
リビングを出て耳を澄ましてみるけれど、バスルームやトイレにも彼の気配は感じなかった。


いつの間にかどこかに出かけてしまった……?


ぼんやりとリビングに戻り、時間を確認すると、もう午後八時を回ろうとしていた。
もしかしたら一人で夕食をとりに出て行ったのかもしれない。


そう気付いて、私はガックリと肩を落とした。
私一人ドキドキして空回ったせいで、せっかくの休日を一日無駄にしてしまった。
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