婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
もうこんな時間。
自分の分の夕食を作る気もなくなってしまった。
思わず無意識に溜め息を漏らしてしまう。


けれど。


「明日から仕切り直して頑張ればいっか」


私はその一言で気持ちを入れ替えた。


たった三ヵ月。
こんな調子じゃ、なんの進歩もないまま、あっという間に過ぎ去って、婚約解消なんて笑えない事態に陥ってしまう。


でも、お試し同居はまだ今日が二日目。
たった二日の遅れなら、まだまだ挽回出来る!……はず。


そうと決まれば、無意味な今日は早く終わらせてしまおう。
今日はさっさとお風呂に入って、昨夜全然眠れなかった分、早く寝てしまおう。
それで明日は朝から頑張る。
それでいい。


そう決めて、浴槽にお湯を張った。
お気に入りのバスソルトを入れて、たっぷり一時間かけて身も心もポカポカになって、私はお風呂を出た。
アコーディオン式の二枚扉のスモークドアを開けて、身体から白い湯気を立たせながら、脱衣所に足を踏み入れ……。


「……っ!?」


脱衣所のドアの横の壁に背を預け、腕組みして私をジッと見つめている樹さんの姿に、私は思わず息をのんだ。


一瞬なにが起きたのかさっぱりわからず、呆然と目を見開いた。
次の瞬間、自分が素っ裸なのを思い出し、慌てて胸を両腕で隠しながらクルッと樹さんに背を向ける。


「なっ……なんで!? なんでこんなとこに入って来てるんですかっ……」
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