婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
周りを囲んでいた先輩たちも、チラチラとこっちを気にしながら自分のデスクに戻っていく。
「いいか、生駒。俺をオフィスから追い出そうって言うなら、俺の不在時くらい役に立ってみろ。右腕とは言わない。せめて足の小指程度の働きはしてこい。……終わるまで帰ってくるな。いいな」
樹さんはどこまでも辛辣に私をこき下ろしてくれるけれど、デスクの周りから他の先輩が離れて行くのを横目に、最後の一言だけ声を潜めて私を見上げながら言い捨てた。
その視線にドキッとしながら、私は胸を張って「はい!」と元気に返事をする。
それを見て、樹さんは眉間に皺を寄せて、はあっと大きな息を吐いた。
「嫌味も皮肉も通じない女になに言っても無駄か。頭痛が強まるだけだったな」
そう言って、足元から黒いカバンを取り上げデスクの上に置く樹さんに、私は首を傾げて見せた。
「え、なんで。足の小指って、身体全体のバランスをとる大事な部分でしょ。樹さんの身体を支える役割を任してもらえるなんて、最高に幸せです」
そう言ってニッコリ笑うと、樹さんは一瞬虚を衝かれたように目を丸くした。
けれどすぐに、カバンを持って勢いよく立ち上がる。
「いいか、生駒。俺をオフィスから追い出そうって言うなら、俺の不在時くらい役に立ってみろ。右腕とは言わない。せめて足の小指程度の働きはしてこい。……終わるまで帰ってくるな。いいな」
樹さんはどこまでも辛辣に私をこき下ろしてくれるけれど、デスクの周りから他の先輩が離れて行くのを横目に、最後の一言だけ声を潜めて私を見上げながら言い捨てた。
その視線にドキッとしながら、私は胸を張って「はい!」と元気に返事をする。
それを見て、樹さんは眉間に皺を寄せて、はあっと大きな息を吐いた。
「嫌味も皮肉も通じない女になに言っても無駄か。頭痛が強まるだけだったな」
そう言って、足元から黒いカバンを取り上げデスクの上に置く樹さんに、私は首を傾げて見せた。
「え、なんで。足の小指って、身体全体のバランスをとる大事な部分でしょ。樹さんの身体を支える役割を任してもらえるなんて、最高に幸せです」
そう言ってニッコリ笑うと、樹さんは一瞬虚を衝かれたように目を丸くした。
けれどすぐに、カバンを持って勢いよく立ち上がる。