婚前同居～イジワル御曹司とひとつ屋根の下～
言い含めるように言われて、私はまだ呆然としながら、何度も頷いて返事をした。
それを見て、樹さんはどこかホッとしたように息を吐いた。


「……もちろん、他の女も……誤解させるような女はもうとっくに切れてる。……だから、安心しろ」

「えっ……？」


付け加えられた言葉はわずかに聞き取り辛くて、反射的に聞き返してしまった。
けれど、樹さんはそこには答えてはくれず……。


「……なんかまたボーッとしてきた。生駒、メシ作る気あるならさっさと作れ。……腹減ったから、今ならなんでも食ってやる」


樹さんは顔を背けてふてぶてしく私に命令すると、自分はベッドにゴロンと仰向けになった。
顔の上で組んだ肘が邪魔で、私からその表情は見えない。
でも……。


「は、はいっ……！」


とっても心が弾むから、樹さんが言ったように、プラスに解釈なんかしなくても嬉しい。


スキップしたくなるような気分で、樹さんの部屋から出た。
カウンターを回り込んでキッチンに入り、スーパーの袋から買ってきた食材を取り出して並べる。


目一杯腕によりをかけてお料理したい気分だった。


鶏のもも肉はこのままソテーにしたいな。
もっと凝った味付けにしたい。
照り焼きでもいいし、ハニージンジャーでもいい。
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