ひと月の妹
「お早いですね~」
声をかけると先に来ていた前園さんが
病室の椅子から立ち上がった。
「星(アカリ)さま」
「夏帆ちゃん、いかがですか?」
「おかげさまでだいぶ良いようです。」
「さっきまでは起きていたのですが・・」
「少し、外にでましょうか?」
「そうですね。」
眠っている娘さんにそっと視線を投げかけながら
前園さんはわたしと一緒に外へ出た。
風が通る庭のベンチにお互いが座って
意見を交わして持っていた書類を手渡された。
「お持ち帰りになってご検討下さい。」
「ありがとう!助かります。」
いつもならここで
ある程度の会話が済んだら
前園さんは病室に戻るのに・・・
座ったまま彼は遠くの方を
見て重い口を開いた。
「このままで宜しいのですか?」
「橋本麻美さまと司さまのこと」
「わたしは、賢すぎたのよ・・・」
「だからおばさまには、好かれなかったのね。」
「麻美さんの方が司さんにはちょうどいいのよ。」
(普段は口の堅い秘書さんも知りすぎた
思い出のせいで大人の意見をくれたのだ。)
病院という場所のせいかもしれない・・・
「星(アカリ)さま、今後も手伝えることが
あるのならおっしゃって下さい。」
頭を下げて前園さんは夏帆ちゃんの
寝てる病室に戻っていった。